When a child is born, a father is born

「育児をしない男を、父とは呼ばない」

1999年の厚生省の少子化対策としての啓発活動のキャッチコピーは、賛否両論を巻き起こした。立命館大学の中村正さんは「男性性への脅迫とケンカ」であるとして、ずいぶんと批判をされていた(中村正. 2001. 「父親不在の問題」『 現代のエスプリ』408:40-48.)。2012年の原稿でも繰り返し批判をされているので、この問題への批判の深さが推測される。

彼が関わる男性性臨床のフィールドでは、さぞやこの「脅迫とケンカ」型のフレーズが多いのであろう。「暴力をふるうなんて男らしくない」「お酒やギャンブルなんて男らしい強い意志があればいつでもやめられる」「やめられないのは弱い男だ」など(アルコール依存やギャンブル依存はもちろん女性にもあり、女性の場合は子どものためならやめられるでしょ、という母性へのワードディングにすり替わったりする)…。

そんな中村先生は、私の博士論文の審査の年にオーストラリアにサバティカルに出かけられた。私はここぞとばかりに博士論文の提出を1年伸ばし、障害者家族の父親の調査にその1年を費やした。そこで出会った父親たちは、「男らしくケアする」という矛盾に取り組んでいた方々だった。(中根成寿. 2005. 「障害者家族の父親のケアとジェンダー--障害者家族の父親の語りから』『障害学研究』(1):158-88.

中村先生は、サバティカルからの帰還のお土産に「When a child is born, a father is born」というフレーズのフォトマグネットをくれた。なるほど、「育児をしない男を〜」と比べると、そのメッセージの成熟性は格段に高い。

子どもが生まれる時、父親も生まれる。